駆け抜けた日々

プチ介護 

魅力

それから1年もたたないうちに

家の事情で止む無く

一旦仕事を辞める事になった

 

 

 

 

 

仕事最終日

予想もしない出来事が起きた

 

 

スタッフや利用者の方に

最後の挨拶をし

帰ろうとしたその時

 

 

いつも私の事を認めてくれなかった

利用者の菊田さん

 

 

その方は車椅子生活で

お話は普通に出来る方だった

見た目は若い頃はきっと美人さんに

違いないと思わせる位瞳が綺麗なおばぁちゃん

 

でもスタッフに厳しく

いつもダメ出しをされ

先輩の沢田の事を特に気に入っていて

私には目もくれないようだった

 

 

その菊田さんが

私の手を取り

 

「りんさん、辞めてしまうのかい?寂しくなるね」

 

 

と涙を流してぎゅっと手を掴んできた

 

 

 

 

ちょっと待って

 

 

 

こんな展開予想してない

しかもこんな自分のために

涙まで流して…

 

 

 

だって毎回介助する度

ダメ出ししかされた事ない菊田さんに

そんな事言われるなんて

 

 

 

 

胸がいっぱいになって

涙が溢れてきた

 

 

 

「菊田さんありがとう。元気でね」

 

 

と施設をあとにした

 

 

こんなに別れを惜しんだのは初めてだった

 

 

 

あっけなく過ぎ去りし日々だが

 

 

私は介護の魅力に取り憑かれ

家のゴタゴタが落ち着いた頃に

今度は有料老人ホームで働く事になった