駆け抜けた日々

プチ介護 

通帳紛失事件

じぃから通帳の管理を頼まれるようになり

年金受取日にはその都度

郵便局でお金を下ろしに行った

 

 

 

そんな中

 

 

じぃから通帳の金額チェックを頼まれた

 

いつもの引き出しから

通帳を取り出そうとしたら……

 

 

ない…

 

 

通帳が💦

 

 

まさか?

 

 

泥棒?

 

 

 

心当たりがある場所全部探したがなかった

 

 

でも待てよ

 

印鑑はある

 

という事は盗まれたわけでないはず

 

 

 

もしかしたら

新聞のチラシと一緒に捨てたとか?

 

 

何日かたっても見つからなかったので

結局前の通帳引き継ぐ形で

新しい通帳を作ることにした

 

しかし通帳を作るには

本人と保険証が必要だった

 

生憎病院の管理は自分ではないので

叔父に経緯を話して保険証を貸してもらった

 

 

 

一瞬自分が盗んだのだと思われないか

頭をよぎった

なんだか嫌だった

 

 

すぐに新しい通帳ができるわけではなかったのでしばらくお金を下ろす事はできずにいた

 

そして1週間後いつもように仕事を終わらせて

じぃ宅に行くとじぃは1人で怒っていた

 

 

たまたま見ていたテレビから

郵便局員になりすまして通帳が盗まれたという内容のニュースを目にし

何を思ったのかじぃは自分の通帳も盗まれたんだと勘違いしてこちらにあたってきた

 

 

違うよーー

 

そもそも認知症が原因で通帳紛失したわけで

 

盗まれたわけじゃないよ

 

 

 

 

説得しても聞く耳持たず

 

 

ふぅぅ

 

 

何を言っても無駄だ

 

 

今日は早めに帰ろう

と帰宅した

 

 

結局古い通帳は、ばぁが持ってた

 

 

はい?

 

 

よくよく話を聞いてみると

 

じぃが通帳チェックした後

ばぁに見せてそのまま自分でどこかにしまったらしい

しかも2人ともその流れを一切覚えていなかった

 

 

いよいよ認知症の進み具合も

安心していられなくなった

初めての喧嘩

じぃは腕時計をなくしたらしく

腕時計を買いに行きたいと言ってきた

 

他の時計はないのか聞いてみると

 

最近100均で買った腕時計が

中々腕にハマらなくて

ハサミで切ったって

 

 

でたでた‼︎

 

 

時計がはまらないからってハサミで切るかい?

 

 

もう使えないじゃないですか

 

 

 

 

まぁ仕方ない

 

その日は車でじぃと2人で

いつもの商店街の時計屋さんに出かけた

 

 

時計屋さんに着く前に

値段はどれ位がいいのか聞いてみたら

そんなに高くなくていいと言っていた

 

 

 

いざ時計屋さんに着くと

接客態勢万全

 

その店の店主とその親夫婦

3人がじぃの相手をする

常連らしく慣れたもので

高い時計ばかり勧めてくる

 

じぃはその接客対応に押されてしまい

そこそこ高い腕時計を買うことに

なりそうになってしまった

 

そこで私は

見た目も性能も最低限の腕時計を推し

強引にひきとめた

 

そしたらじぃ

 

 

 

 

「黙ってればいいんだよ俺が決めるんだから」

 

 

 

 

…………

 

 

 

………………

 

 

 

カッチーン

 

 

 

あのさぁ

今抗ガン剤治療でどれ位

お金がかかってるか知ってます?

そしてその後入院とかになったら

さらにお金かかりますよ

こんな所で無駄な

お金使ってる場合じゃないんですよ

分かってます?

 

こちらの要望よりはるか高い商品ばかり

無駄に紹介してきて腹立つ

更にじぃが簡単に

口車に乗せられてるのを見て腹立つ

 

 

 

「車で待ってるからじぃが勝手に決めて」

 

 

 

勢いよく店を飛び出した

 

 

 

しばらく待つとじぃが帰ってきた

 

 

「ここの店はいつも高い時計ばかり勧めるの?悪いけど私はもうここには2度と来ないから」

 

 

 

態度がいつも横柄なじぃは

よそよそしくなって

私をなだめてきた

その姿を見て少し

可哀想になってきたので

すぐ仲直りした

 

 

 

今思えば

残りの人生を考えたら

少し位高い時計を買っても良かったかなと

 

 

 

完全に私のエゴだったと

振り返って気付いた

 

シルバーカー紛失

とある朝

叔父から電話

 

じぃが深夜に田舎の夜の街を徘徊中

シルバーカーをなくしたと

 

 

もし時間があれば探して欲しいとの事だった

 

 

 

仕事場に行く途中にじぃ宅があるので

早めに家を出て探しにいった

 

 

そもそもなぜ徘徊したのか聞いてみると

煎餅と饅頭が食べたくなって

じぃ宅から徒歩5分位にコンビニがあるのだが

夜な夜な遥々コンビニまで買い物に行ったらしい

 

 

その際、

山で転んで近くにいた新聞配達員に

助けてもらったと

 

 

 

 

ん?

 

 

 

山?

 

 

 

こんな平地の見渡す限り田んぼが広がる田舎に山なんてありませんが?

 

 

 

とにかくその日はコンビニに向かい

店員に事情聴取

 

 

 

じぃはそのコンビニの常連で

店員も覚えてくれていた

 

 

がしかし

シルバーカーは見つからず

しばらくじぃが歩いたであろう道を

探しながら帰った

 

 

 

にしても山ってどの山だろう

 

 

 

 

気になって探してみたら

 

 

 

 

あった

 

 

 

⛰⛰⛰山⛰⛰⛰

 

 

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これ

   

 

 

 

じぃはこの山にシルバーカーがぶつかり

転倒したようだ

 

 

 

 

またまたじぃには悪いけど

私この山を見て1人で笑ってしまった

 

 

 

だって山

こんな小さな山で転倒って

 

 

 

 

 

どんだけーーー‼︎‼︎

 

 

 

 

 

夜中真っ暗な中

電灯も少ない田舎の道路

そりゃこんな山に突撃したら転倒するわ

 

 

 

もうこれは笑うしかない

 

 

山の写真をちさにも見せて2人で笑った

 

 

 

結局シルバーカーは

叔父が見つけて一件落着となった

変質者 

じぃは段々認知症と思われる症状が出てきて

 

 

庭の剪定の際脚立から落ちて

軽い怪我をしたり

自転車で買い物に行った際

財布をなくしてきたり

服を裏表反対に着てみたり

色々やらかしてくれる

 

 

この間は仕事場からじぃ宅へ向かう途中

お菓子のような袋が落ちてて、車を停めて降りて確かめてみると開封してない煎餅の袋だった

 

 

-これってじぃが好きな煎餅だよな-

 

 

一瞬迷ったが、直感で持ち帰ろうと思った。

 

 

じぃ宅につきさっそく聞いてみると、やっぱりじぃが落とした煎餅だった😎

 

ある意味奇跡的なやりとりだった

 

さすが孫!

自分を自負してしまった

 

 

 

 

 

またある日の事

いとこのちさから聞いた話だが

じぃは上半身肌着で下半身露出、それに長靴

こんな格好で庭をうろうろしていたらしい

 

ひどい時は真夜中その格好で

ちさ宅の玄関をドンドンと叩き

奇声を上げる時もあったらしい

 

 

 

 

 

じぃよ

 

 

それを世間では変質者と言うのだよ

 

 

 

じぃには悪いけど

 

その話を聞いて1人で笑ってしまった

 

 

 

辛うじて庭の外には出ていないから

よかったけれど近所迷惑になってしまう💦

 

注射生活の始まり

腰をおかしくしてからというもの

 

しばらく仕事もできなくなり

介護からは離れる事にした

 

 

だいぶ話は脱線したが

ここからはじぃの注射生活に戻す事にする

 

 

 

午前中は仕事

午後からじぃ宅へ

 

インスリン投与

それに加えて買い物

認知症を少しでも遅らせるために

お茶を飲みながら昔の話をして帰宅

 

そんな生活が1年以上続いた

 

 

 

 

 

 

毎日幸せだった

 

 

 

父の仕事を手伝って親孝行できて

じぃばぁの世話も元気なうちに

こんな形でできて

喜びを噛み締めていた

 

 

 

もちろんじぃのわがままが

ストレスになる事もあったが

 

 

 

いつか恩返しがしたいと思っていた

 

 

 

 

幼い頃親が仕事で鍵っ子だった子は

寂しい思いをしたと聞く

うちもそうだっのだが

私はそんな事なかった

 

 

妹もいたし近くにいとこも住んでいて

じぃばぁにはよく近くの公園に

連れていってもらったりしたのを覚えてる

一緒に窯でうどんを茹でたり

イカを割ったり

餅つきをしたり

 

 

 

 

知らないうちに思い出を作ってくれていた

 

 

 

だから何かの形で返したいと思っていた

せんぱーーーい

異動命令が下され

違う部署に配属された

 

 

ここは、異動が頻繁にあるようだった

理由は分からないが

流れに身を任せた

 

 

 

ん?

 

人手やばくない?

 

 

 

 

今までで1番人手が足りないと感じた

 

しかもそこにはサボり魔な先輩が存在した

その先輩は綺麗でスタイルも良く

介護職で働くにはもったいない女性だった

でも自分では腹黒い事は認めているようだった

 

 

 

その先輩とシフトが一緒になると

とんでもない事になる

 

 

 

フラ〜っとどこかに消え

ひどい時は2人分の仕事を

私が1人で受け持つ事もあった

 

 

 

 

ちょっとー

 

 

どんだけーーー!!

 

 

 

私が文句言わない性格だって知ってて

消えるなんて 

 

 

 

せんぱーーーい

 

 

 

あなたのおかげで

私腰おかしくしました

動けなくなりました

 

 

 

そう

案の定そんなハードスケジュールに追われていたおかげで、一人で起き上がる事ができなくなる位腰を壊しました

 

 

自分の私生活さえままならない

こんな事ではやっていけない

 

 

 

 

 

 

あっけなく退職となった

 

 

 

 

もう笑うしかない

 

 

自分なりに

そんな日々の中でも良い事はあった

 

過去に働いていた特養とは比べて

比較的認知症の方が少ないせいか

 

“ありがとう”

 

と言われる事が多くなった

 

 

それに介護に携われば携わるほど

利用者の方と親密感が増し

世間話もできるようになり

人生の先輩方と話す時間は

とても貴重なものとなった

 

 

それと気難しい性格の利用者の方と

心を打ち解けて話せるようになった時の

充足感など悪いことばかりではなかった

 

 

 

そんな中いつも通り

バイタルチェックに回っていた私

 

穏やかで優しい感じの斉木さん

夫婦で施設に入所しているのだが部屋は別々

旦那様は他の部屋で寝たきりで介護を受けている

 

その斉木さん(奥さん)の部屋を覗くと

車椅子に座って窓の外を眺めている後ろ姿が

とても寂しそうで少しの時間声をかけられなかった

 

 

 

 

 

またいつもの癖が…

 

もしも自分が斉木さんだったら…

 

 

 

 

車椅子で思うように動けない

 

外出もできない

 

好きな時間に好きなものも食べれない

 

時間に拘束される

 

旦那様は寝たきり

 

 

 

 

 

 

 

耐えられる?

 

年を重ねれば

 

耐えられるようになる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例えばそこが草原だったとして

 

 

 

私はその中で一輪の花になろうと思った

 

 

 

一人一人と関わる時間を大切にしたかった

 

 

 

何が必要で

 

何で喜んでくれるか

 

 

自分ができる事を探した

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで段々慣れてきた矢先に

異動命令がきた